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「流域」は地域と地球を知るマジックワード「『流域地図』の作り方: 川から地球を考える」 [読書]

ここ数年の地図ブーム、地形ブームだからこそ知っておきたい、流域住所とは何かを知るための入門書です。


「流域地図」の作り方: 川から地球を考える (ちくまプリマー新書)

「流域地図」の作り方: 川から地球を考える (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 岸 由二
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2013/11/05
  • メディア: 単行本



川歩きはもちろん、窪地や崖といった微地形、暗渠など、最近ブームになっている地形・地図ブーム。このような地形は、主に川や海が大地を刻んで作られたものです。駅や郵便の宛先としてならよく知っていても、今住んでいる場所や勤務先がどこの川が刻んだか、パッとわかる人はいますか?

本書では、その場所を流域地図で把握する方法や調べ方について簡潔に書かれていて、ポイントは、すべての大地はなんらかの流域に区分されるということです。逆にいうと、流域を組み合わせていくと、日本全体、地球全体が把握できてしまうというわけで、「流域」はどこでも場所を特定できるマジックワードです。

で、ある場所に降った雨は必ずどこかの川に流れて行くはずで、それを逆に河口側から辿って行くと、枝分かれしていって、最終的にはどこかの源流の谷にたどりつきます。その順で、本流、支流、そのまた支流と名前を並べていくと、その場所の流域住所になる、というわけ。どんな場所でも行政住所に頼ずとも流域住所で特定することができる、というのが分かります。

そして、本書では、この流域住所、流域地図を活用した自然保護活動への活用や、来るべき気候変動への対応について書かれています。これが、もう一つの本書のポイント。フィールドは自然豊かとはいえない都市近郊ですが、流域のどこをどのように自然空間を守るのか、一つには水マスタープランをとりあげ、洪水の調節と水循環や環境の保全について、流域レベルでマネージメントされていることを紹介し、また、鶴見川や三浦市にある小網代の森などで流域スケールでの活動も紹介しています。

本書では、流域地図の作り方を通じて、生きものとの共感や、地球と距離感の近い住み場所感覚を取り戻すことを訴えています。行政住所や里山といった位置情報や感覚は単純明快ですが、水循環やエコロジカルな繋がりを考えながら地域の広がりを理解するには確かに不十分な感じではあります。

地形歩きの中で、どこの川の流域を歩いているかを意識して歩いたり、住んでいる場所が流域のどこかを地図で探すなどしてみてください。きっと、その流域の他の場所にも興味が広がっていくでしょう。河川管理者だけでなく、いろいろな人が流域をベースにその地域や場所を(面白く?)語るようになると、マクロ的視野の環境保護や気候変動対応に関する理解も広がるかもしれませんね。

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