SSブログ

従来の歴史解釈を地形と気象で再検証する:日本史の謎は「地形」で解ける [読書]

この本は、歴史的な出来事の考察を、いままであまり重要視されてなかった地形や気象、治水で読み解こうとするノンフィクションミステリーのような一冊です。

日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)

日本史の謎は「地形」で解ける (PHP文庫)

  • 作者: 竹村 公太郎
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2013/10/03
  • メディア: 文庫



地形で歴史的な考察というと、頼朝が鎌倉幕府を開いたという理由が、三方を山で囲まれた天然の要塞だった、と考えられているのはあまりにも有名です。(実は本書では鎌倉を選んだ理由がまだあるのでは?とも書かれています)

このところの地形ブームの折、微地形や、建物に覆われて目立たない地形までも楽しむ対象になっていますが、これが幕府の立地や様々な歴史上の重要な事件に関わっていて、従来の歴史解釈よりも確からしいとしたら、こんなに面白いことはありません。(まさにブラタモリ的ではある)

内容の半分ほどは江戸時代、家康が行った江戸とその周辺の街作り、そして家康が天下統一するまでの出来事について書かれています。江戸幕府の開設に時間がかかった理由は地形にあり、また今よりも水捌けの悪さが考慮されていて、江戸は治水との戦いだったことが納得できるかと思います。

中でも、皇居の向きから忠臣蔵にまつわる様々な謎を解明していく部分はとても面白いと思いました。また、小名木川開削の理由が塩の運搬ではないということや、都市に不可欠な飲み水はどうしていたかや、江戸の治水のために吉原を移転させた、など、時の権力者として着々と治水利水工事を行い、はたまた戦略的に水路を掘り、街としての機能を維持してきたことが想像できると思います。

他にも、延暦寺焼き討ちの謎では山岳地形との関係で、蝦夷征伐や尊王攘夷の意味と稲作文化の関係や、平城京があった奈良の繁栄と衰退などについては、当時の海面の高さや低地の地形に絡めて推測していて、納得できると思います。また遷都の謎などで資源やエネルギーと絡めて書かれているのは面白かったです。

また、近年ではインフラの整備と維持のための資金はとかく無駄使いが指摘されますが、それは無駄ではなく必然的で、また工夫によって維持されていることが垣間見えます。(筆者が河川管理の現場にいたからでしょうか?)

少々厚い本ですが最初から順番に読むと、前章の内容をふまえて書かれているので、次々と読み進む事ができます。人文社会学的な事もところどころで傍証として取り上げられているので、歴史そのものが好きな人にも楽しめると思います。読んでいたら、他の歴史のミステリーも地形で解明できるのでは?と思えてしまいますよ。

↓と、書いていたら、どうやら2月に続編が出るらしいです…

日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 (PHP文庫)

日本史の謎は「地形」で解ける【文明・文化篇】 (PHP文庫)

  • 作者: 竹村 公太郎
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2014/02/04
  • メディア: 文庫


タグ:地形 歴史
nice!(2)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 2

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。