鳥たちの旅/樋口広芳(著) [読書(鳥関係)]
渡りをする鳥は多いのに、その鳥の渡りの経路を調べるのは手間暇がかかり、実に難しいことです。この本では、人工衛星を利用して、鳥の渡りを調べた成果について紹介しています。
人工衛星と、鳥の位置情報を交信するには、ある程度の大きさの発信器を取り付けなければならず、そのため、中型以上の鳥でしか調べることができません。しかし、ツルやコウノトリ、猛禽類など、中型以上の種は保護が必要な鳥が多く、これらの鳥が調べられています。この本では、調査対象となった渡り鳥がどのような経路で渡っていたかを紹介していて、渡り鳥は実に壮大な旅をしているのだということが分かります。中でも、ハチクマというタカは、朝鮮半島を経由するので、単純に南下、北上するわけではないことが分かります。その他にも、いろいろな種類の鳥の渡りについて書かれており、しかも読みやすく書かれています。
鳥の渡り経路は、親から受け継がれたものや、自分で見つけたものなど、それぞれの鳥の頭の中の記憶に(多分)あり、我々が簡単に見知りできるものではありません。しかし、それを知ることによって、渡り鳥の減少の問題や、どのような場所を中継地や越冬地等として保全しなければならないのかが分かります。この本では発信器のデータをとりあげていますが、どうしても個体数が少なくなる傾向があります。これまで行われてきた、定点観察のネットワーク(タカは結構、このネットワークがあるの)や、分子学的な分析といった様々なアプローチによる裏付けで、渡りの謎が詳しく解明できることを期待したいと思います。
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