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ドキュメンタリー映画 鳥の道を越えて 観覧記 [鳥見日記]

先日「鳥の道を越えて」というドキュメンタリー映画を観てきました。

この映画は、渡り鳥をかつて食料としてかすみ網で捕まえていた製作者のおじいさまの記憶を元に、鳥の捕獲の歴史や地誌、過去の狩猟技術や文化、現代の渡り鳥研究についてたどるというドキュメンタリーです。

ドキュメンタリー映画「鳥の道を越えて」
http://www.torinomichi.com

渡り鳥の群れが山の尾根を越えてくる場所を、ここでは「鳥の道」と呼んでいます。そこに網をかけて渡り鳥を捕まえて食料にしていたというのは、それほど古い話ではなく、国内では戦後の鳥獣保護法によって、かすみ網が規制されるまで行われていました。この映画を監督された今井友樹さんのおじいさまが、この猟を昔行っていて、その記憶を手掛かりに、今でも行われている猟場や網場(鳥を捕まえるために、かすみ網を張る場所)を訪ね、鳥の道や、かすみ網猟に関するいろいろな疑問を解明するという内容になっています。

現在でも渡り鳥のコースはだいたい決まっていて、そのコース上では、渡り鳥保護のための標識調査を行う環境省の鳥類観測ステーションが運営されていたり、現在でも一部で伝統的に行われているカモ猟の猟場があります。現在ではこのように一部で許可を受けて、研究目的や捕獲技術の伝承のために鳥を捕まえているにすぎません。

これまで、鳥の捕獲に関して、国内で詳しくまとめられた文献や映像というのはあまりありませんでした。その中で、この映画は多くの人のインタビューで構成され、この映画がなければ後世に残らなかったような内容も記録されていて、日本におけるかつての鳥類捕獲の技術や文化を知る上では貴重な映像となっています。現在では所持が禁止になっているかすみ網は、実は研究目的では広く世界で使われていて、これが日本発祥だというのもあまり知られていないと思います。

かつては頭上が鳥で黒くなるぐらいに群れが飛び、それを鳥屋場(かつての網場)で捕まえていたというのですから、想像がつきません。現在ではそのような光景があまり見られなくなってしまいました。渡り鳥の減少は。このような猟が原因のひとつと紹介されてはいますが、越冬地や繁殖地、他の経由地、気候的要因など他の要因も紹介されていれば良かったかもしれません。

現在の法律では鳥の捕獲が原則禁止となっているため、鳥の捕獲を題材にした映像はけしからんという向きもいるでしょう。このような猟について語る人も少ないと思います。しかし、かつて鳥を捕獲していたという歴史は事実であり、研究として今なお技術が伝えられていることもあります。なぜ鳥を捕まえていたのか、どのように利用していたか、という疑問もわいてくるでしょう。

その点では、まとまった映像が出来上がったのは良かったと思います。かすみ網猟を知ることから猟の技術の解明や渡り鳥の保護について考えるという切り口も斬新で興味深いと思いました。猟をされていた人のお孫さんが映像づくりに関わっていたのも幸運だったと思います。

写真はこの映画のパンフレットでセリフの書き起こしがあります。これもすごく貴重な資料です。
IMG_3909.JPG

4月下旬まで、横浜で上映されていて、以降は京都で上映が予定されているということですので、まだご覧になっていない方はぜひご覧ください。詳しくは下記のリンクからどうぞ。

ドキュメンタリー映画「鳥の道を越えて」
http://www.torinomichi.com

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長編ドキュメンタリー鳥の道を越えて

長編ドキュメンタリー鳥の道を越えて

  • 作者: 今井友樹
  • 出版社/メーカー: はる書房
  • 発売日: 2014/11/01
  • メディア: ムック



タグ:映画 渡り鳥
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